『特権 (privilege)』ってなに?

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Hello! コネクトシスターズのYukiです。

4月のテーマは、「特権(Privelege)」

社会的地位がある人や財産や資源をたくさん持っている人だけが持っていると思っていませんか?

実は気づいていないだけで、それぞれ何かしらの「特権」を持っているかもしれません。もしかしたら持っているかもしれない「特権」について考えていきましょう!

特権(privilege)」とは?

まずは、いつものように改めて「特権(privilege)」という言葉の意味を振り替えてみましょう。

デジタル大辞泉によると (1)

特定の身分や地位の人がもつ、他に優越した権利

デジタル大辞泉:特権(とっけん)

これに当てはめると、明確な身分制度がない現代の日本においては、身分に基づく「特権」は想像しにくいです(一方、地位による「特権」は心当たりがあるでしょう)。

別の定義もご紹介します。

アメリカにあるライダー大学(Rider University)の教授によって運営されている研究ガイドのWebサイトにおける、「特権」の定義は次のようになります。(2)

“(“Privilege” refers to) certain social advantages, benefits, or degrees of prestige and respect that an individual has by virtue of belonging to certain social identity groups.”

和訳してみると

「特定の社会的アイデンティティグループに属していることによって個人が持つ、特定の社会的利点、便益、または名声と尊敬の程度。」Google翻訳使用)

この定義では、「社会的アイデンティティーグループ」という表現を使って、かなり広範囲の人が「特権」を持つ対象としています。

「社会的アイデンティティーグループ」は、民族、人種、ジェンダー、年齢など私たち一人一人が必ず持ち合わせています。例えば、国籍もその一つ。日本に住んでいる多くの人が日本国籍を持っています。そして、みなさんの中には、日本国パスポートを持っている方もいるでしょう。

ご存知の方もいらっしゃると思いますが、この日本国パスポートは、2018年以降、グローバルパスポートランキングで第1位です。(3) たくさんの国にビザなしで入国できる(観光やトランジットの場合)ことは当たり前ではありません。ビザ取得の流れは、時間も費用もかかることが多く(ビザ代を支払い、様々な書類を提出し、大使館での面接など審査を受けるる等)、観光ビザを取得するのにも、このような長い時間を必要とする国々もあります。日本国パスポートを持つということは、世界的な観点から見ると、「特権」と言えるでしょう。

Intersectionality(交差性)と「特権」

ここで、学問の分野(特に、社会科学系)でよく使われる概念、intersectionality(交差性)を紹介します。

Intersectionality(交差性)という概念は、1989年にKimberle Crenshaw教授が紹介した概念で、最近は社会を分析するツールとしても使われることもあります。

私たちが社会で経験することは、民族・人種・ジェンダー・セクシャリティー・年齢などの個々の社会的位置(英語だと、social location)によって形成されており、これらの社会的位置が「交差」(intersect)しながら、日々の経験、アイデンティティーの形成、そして、社会全体に影響を与えていると考えるのが、intersetionality(交差性)という概念です。(4)

簡単に言えば、同じ女性でも、人種やセクシャリティーによって、社会の中で異なる経験をする、ということになります。

このintersectionality(交差性)が、「特権」とどのように関係しているのでしょうか?National  Career Development Association(全米キャリア開発協会)が、intersectionality(交差性)と「特権」に関する、とても興味深い記事を投稿しています。(5) 

この記事の中で、「特権」の軸に存在するアイデンティティーが紹介されています。(5) そのアイデンティティーとは、ジェンダー・人種・セクシャリティー・障がいの有無・年齢・言語・学歴・ルックスなど、多岐にわたります。「特権」を持ちやすいアイデンティティーと、そうではない(記事の中では、「抑圧」という言葉で表現されています)アイデンティティーがあり、私たちは両方のアイデンティティーを持っている、とこの記事では書かれています。(5)

この記事を読んで、私自身の経験を思い返してみると、「特権」を持ちやすいアイデンティティーとそうでないアイデンティティーは、自分の居場所によって変わるのでは?と思います。

私のアイデンティティー(日本人女性で、日本語が母国語)で日本に住む場合と、海外で生活する場合を比較すると、海外での生活の方が苦労が多いのことは事実です。アジア人に対する差別・偏見、女性蔑視(男性優位主義の国の場合は特に)、第2言語・第3言語(日本語ではない言語)を使うこと、など、海外で生活したことがある人は感じたことがあるのではないでしょうか。

色々な角度から考察してみると、「特権」は地位がある人や財産をたくさん持っている人のみが持つものではなく、気づかないうちに誰しもが持ちうるものであることに気づくことができます。今月(2024年4月)のコネクトシスターズの教材を通して、多くの人がそのことに気づいてもらえると嬉しいです😊

参考文献

(1) デジタル大辞泉

(2) Hofmann MA. Research guides: Privilege and intersectionality: What is privilege? [Internet]. guides.rider.edu. 2018. Available from: https://guides.rider.edu/privilege 

(3) The Official Passport Index Ranking [Internet]. Henley & Partners. 2022. Available from: https://www.henleyglobal.com/passport-index/ranking 

(4) Hofmann MA. Research guides: Privilege and intersectionality: Intersectionality. [Internet]. guides.rider.edu. 2018. Available from: https://guides.rider.edu/privilege/intersectionality  

‌(5) Intersectionality [Internet]. National Career Development Association. 2017. Available from: https://www.ncda.org/aws/NCDA/pt/sd/news_article/139052/_PARENT/CC_layout_details/false  

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